🎯この法律のポイント
夫も年齢や障害に関係なく遺族補償年金を受け取れるようにする
国家公務員が仕事や通勤が原因で亡くなると、その人の収入で暮らしていた家族(遺族)に、遺族補償年金という年金が出ます。
共働きで、生活費の一部を支えてもらっていた場合も対象です。
今は、妻は年齢に関係なく受け取れます。
一方で夫は、60歳以上か、一定の障害がある場合しか受け取れません。
55歳から59歳の夫は受け取る資格はありますが、60歳になるまで支払いが止まります。
たとえば、妻の収入で暮らしていた50歳の夫は、障害がなければ今は受け取れません。
この法律で夫の年齢と障害の条件をなくし、夫も妻と同じように受け取れるようにします。
亡くなった人の父母や祖父母、兄弟姉妹の条件は変わりません。
遺族が1人のときの年金額を175日分にそろえる
年金の額は、亡くなった人の1日あたりの給料(平均給与額)の何日分かで決まります。
今は遺族が1人のとき、1年に153日分が基本で、55歳以上か障害のある妻だけが175日分です。
この法律で、遺族が1人のときは誰でも175日分にそろえます。
遺族が2人以上のときの額は変わりません。
判断が難しい病気は、請求できる期間を2年から5年に延ばす
国家公務員が仕事や通勤が原因でけがをしたり病気になったりしたときは、治療費などが補償されます(療養補償など)。
今は、請求しないまま2年たつと、受け取る権利がなくなります(消滅時効)。
この法律で、仕事が原因かどうかをすぐに判断しにくい病気については、請求できる期間を5年に延ばします。
対象の病気は、国家公務員の給料や働き方のルールを担う国の機関(人事院)が規則で決めます。
人事院は、脳や心臓の病気、心の病気などを想定しています。
共済組合の公務遺族年金でも、夫の年齢の条件をなくす
国家公務員が入る共済組合(公務員の年金などを運営する組織)からも、公務で亡くなった人の遺族に年金が出ます(公務遺族年金)。
今は夫が受け取るには、亡くなった時点で55歳以上である必要があり、60歳になるまで支払いが止まります。
この法律で、この年齢の条件と支払いの停止をなくします。
また、30歳未満で受け取り始めた妻の年金が一定の場合に5年で終わるルールを、夫にも同じように当てはめます。
2027年4月から始まり、それより前に亡くなった場合は今のルールのまま
この法律は2027年4月1日から始まります。
それより前に亡くなった場合、誰が年金を受け取れるかや支払いの停止などは、今のルールのままです。
請求できる期間の延長は、2027年4月以降に起きた病気が対象です。
✏️この法律が必要とされる理由
共働きの家庭が増え、働き方や家族の形が変わったから
遺族補償年金は、亡くなった人の収入で暮らしていた家族が、その収入を失ったことへの補償です。
人事院は、共働きの家庭が増えるなど働き方が変わったことを踏まえ、時代に合った支えになるよう見直す必要があるとしています。
会社員などの同じような年金を検討した厚生労働省の研究会も、制度ができてから半世紀以上がたち、男女の働き方や家族の形が変わったとして、夫と妻の条件の差はなくすべきだという意見で一致しました。
会社員などの労災保険では、先に男女差をなくすことが決まったから
会社などで働く人が仕事や通勤でけがをしたり亡くなったりしたときの国の保険(労災保険)でも、夫にだけ年齢などの条件があります。
2026年7月に改正法が成立し、2027年4月からこの条件がなくなります。
遺族が1人のときの年金額を175日分にそろえ、判断が難しい病気の請求期限を5年に延ばすことも決まりました。
人事院は、国家公務員の補償は民間の制度とのつり合いを考える必要があるとしています。
そのうえで2026年8月、国会と内閣に法律を変えるよう意見を出しました。
公務員の遺族への2つの年金を一緒に見直すため
国家公務員の遺族には、遺族補償年金のほかに、共済組合の公務遺族年金も出ます。
政府は2つの制度を一緒に見直すため、公務遺族年金の男女差もあわせてなくすとしています。
👀意見が分かれるところ
男女差をなくすのは、夫の条件をなくす形でよいか
男女差をなくすには、夫の条件をなくす方法と、妻にも夫と同じ条件をつける方法があります。
民間の制度を検討した厚生労働省の研究会では、夫の条件をなくす方法がよいという意見が大半でした。
一方で、妻の条件を夫に合わせることも検討すべきだという少数意見もありました。
この法律は、労災保険と同じく夫の条件をなくす方法をとっています。
男女の給料の差がある中で、条件をそろえてよいか
2017年の最高裁判所の判決は、地方公務員の同じような年金で夫にだけ年齢の条件があることを、憲法に反しないとしたと指摘されています。
判決は、男女の給料の差や働き方の違いなどを理由にあげていたとされています。
給料の差などの今の状況をどう見るかで、条件をそろえる必要性の受け止め方が分かれるという見方もあります。
年金を受け取れる人や受け取る期間は今のままでよいか
民間の同じような年金について、厚生労働省の研究会では、何を補うための年金なのか意見が一致しませんでした。
研究会は、夫や妻以外の遺族の条件や、受け取る期間が妥当かも含めて、議論を続ける必要があるとしています。
受け取る期間を区切る形を、長い目で検討すべきだという少数意見もありました。
この法律は、夫と妻の差をなくすことと、遺族が1人のときの年金額をそろえることにとどめています。
請求できる期間を延ばす病気の範囲をどう決めるか
請求できる期間が5年になる病気は、法律ではなく人事院の規則で決まります。
どの病気が対象になるかで、救われる人の範囲が変わります。
民間の制度を検討した研究会では、請求の手続きが病気を悪化させることもあるため、配慮が必要だという意見がありました。
一方で、相談の支援や制度を知らせる取り組みなどで対応すべきだという意見もあり、結論は出ませんでした。
よくある質問
Q. 遺族補償年金と公務遺族年金は何が違うのか
A. 遺族補償年金は、仕事や通勤が原因の死亡について、各府省などが遺族に支払う補償です。
公務遺族年金は、共済組合が組合員の遺族に支払う年金です。この法律は両方の男女差をなくします。
Q. すでに年金を受け取っている人にも関係はあるか
A. はい。遺族が1人で153日分を受け取っている人は、2027年4月以降の分から175日分に増えます。
一方、2027年4月より前に亡くなった場合に、夫が新しく受け取れるようになることはありません。
Q. 妻が年金を受け取る条件は厳しくなるのか
A. いいえ。妻は今と同じく、年齢などの条件なしで受け取れます。この法律は、夫の条件をなくす形で男女差をなくします。
🙋影響を受ける人
- 仕事や通勤が原因で妻を亡くした夫:年齢や障害に関係なく年金を受け取れるようになります。
- 遺族が1人で年金を受け取る人:55歳未満で障害のない妻などは、153日分から175日分に増えます。
- 脳や心臓の病気、心の病気などになった公務員:対象になれば、請求できる期間が5年に延びます。
- 人事院・各府省など・共済組合:新しいルールに合わせて規則などを整え、年金を支払います。
🌐関連リンク